入浴

 職場が天下の名勝。嵐山の真ん中にあり、送迎の道々観光地をめぐるような絶好の立地条件にあるのが魅力のひとつだが、紅葉の観光シーズンにはこれがまた厄介なことになる。連日どこから沸いてくるのかと思うくらい大勢の観光客が押し寄せている。朝夕の送迎は観光客の列を割ってメインストリートに車を出すことになる。
 「嵐山花と灯ろう」のイベントが終わるまでデイサービスの送りの時間を切り上げることになった。となると午前午後と2回に分けていた入浴が午前中には終わっていないといけないということになり、いきおい12時近くまで入浴が続くことになった。
 Nさんを入浴の案内に行くと時計を見ながらもう12時だよという。申し訳ありませんと平謝りしながら浴室まで案内した。「ちょっと考えないといけないよね」といつも温厚なNさんがおっしゃる。再度すみません、この時期だけはどうしても皆さんに午前中にはということになってしまってというと「いやあんたら使われてる身だから」と慰めてくださる。総じて利用者さんの側の理解や思いやりで成り立っているところがある。本当はこちらがサービスを提供する側で、利用者さん側のニーズを最大限汲み取ることが一番の仕事なのだが職員の側にも甘えがあるのは確かなことに違いない。努力したいとは思うが自分の非力が申し訳ない。