西向く侍

 
 今日は職員が少なくばたばたとしている内に一日が過ぎた。そういう時はどうしても一人ひとりに目が行かなくなる。Kさんがうろうろし始めた。時間をもてあますと狭い部屋の中をあっちに行きこっちに行き、引き出しを開けては閉める。ようやく手が空いたときに、突っ込んだ紙でふくらんだポケットから、塗り絵カレンダーを取り出して拡げていたので「いい色を塗ってらっしゃいますね。もう11月も半分まで来ましたね。」と声をかけると「11月はにしむくさむらい、30日しかないから12月もすぐだよ」と返ってきた。
 にしむくさむらい、小の月の覚え方だが若い世代は知らない人も多い。職員のMさんは以前の職場で98歳の方に教えてもらったそうだ。20台のEさんに聞くと知らないという。
 「30日の月は小の月、にしむくで2,4,6,9が30日、十一はさむらいになるから11月。他の人に教えてごらん」と、得々と説明している。
 覚えておくと便利なちょっとした生活の知恵、こつ見たいなものを年長の方から教えられることは多い。