シャリンバイ(バラ科)

シャリンバイの花がほころびはじめている。沿道にもよく植えられ、その白い5弁花は、華やかさはないが、春先の移ろいやすく、雨がちの天気の日にもすがすがしさをあたえてくれる。車輪梅の名は葉が輪生してつくことから名づけられているという。ここでは、テーチギと呼び、その樹皮は大島紬の染色に欠かせない植物である。
昨年の秋、紬の泥染めをしている、Mさんから、いつも会社に寄っては、コーヒーやお茶をもらうからと、どろとシャリンバイで染めたというショールをいただいた。
本来の紬の染色の他、その技術を生かして、他の製品作りにも手を広げられているということである。グレー地に黒みがかった茶がマーブル状に染められている。その上品な色合いと、手触りのやわらかさは、しっとりと心まで落ちつかせてくれる。
そのショールの色合いの先に広がる、別の世界に一歩足を踏み入れたようでもあった。