五玉そろばん

 Kさんは計算が得意でダーツゲームの点数計算など暗算ですぐに答えを出してくださる。デイ向けの専門誌の中から買い物計算をコピーしてきて実習生と一緒にやってもらった。こんなのは昔はそろばんでやっていたけど今は電卓だもんねとおっしゃるので棚の奥にあったそろばんを出してくると器用にはじき始めた。
 後で見ると答えはちょっと違っていたが、実習生相手にこういう風にするだよと教えている。
「得意な人は頭の中にそろばん置いといてこう手動かしてするんだけどそろばんはじくより早いんだもんね、間違わんしね」
 Nさんに聞くと家計簿の計算とかはやはりそろばんだったそうで、最初は五玉使ってそうだが四つ玉に変わったとのこと。Hさんは駅に勤めていた頃切符の計算はそろばんでちゃちゃっとやって間違いはなかったと自慢する。その頃はかわいかったんでしょうねというと、う〜んそりゃ人気もんやったでぇ。
 Iさんは昔八百屋さんやって頃に使ってたそうだ。横からAさんがおじいさんが和知で料理旅館をやっていたという話が飛び出す。Iさんがやおら「父よあなたは強かった〜♪」と歌い始める。
 そろばんから話が広がった。こんな和やかな、にぎやかな時間も時にはある。