カンアオイ(ウマノスズクサ科)

会社に上がる階段下の日陰に、うち捨てられたようになっていたカンアオイが、新しい葉をふきだしていた。ハート形の裾をうーんと引き延ばしたような形の葉っぱだが、まるで油でも塗って磨き上げたように照り輝いている。
ついこの前まで、縁が枯れて本当の葉の形も分からないぐらい哀れな姿になり、そのまま枯れてしまうのかと思うばかりだったのが、我ここにありとばかりに、こんな美しい葉を伸ばしてきたのにはおどろいた。
そもそもこのカンアオイ、去年マイナスイオントラノオと前後して、山ゴボウ取りなるものが知る人の間で流行った。ちょうどその頃、外を自転車で通りかかった専務の友達の山ゴボウ名人を会社に呼び入れ、ひとしきりその話を聞いたりしたのだが、次の日、自宅で育てたものといって持ってきたうちのひとつ。名人の談によると、腎臓・肝臓その他治らない病気は無いという。腎臓を患っている母親にこれを取ってきて干し煎じて飲ませてあげているという。
乱獲で絶滅寸前だから取るなと言う人もいるけれど親の命に替えられるもんねと言う。
島では山ゴボウとか山ツバシャと呼んでいるが、カンアオイとか言うらしい。
その時、二鉢持ってきたのだが、もうひとつは、まさしく山ツバシャの名の通り丸みを帯びた葉だった。ツバシャというのは、ツワブキのことである。
葉の丸い方を専務が自宅に持ち帰り、会社に残った山ゴボウをせっかく貰ったからと最初のうちは水もせっせとかけていたのだが、その内、きれいな花を咲かせるわけでもないこの植物、葉が枯れてきたら厄介者で、とうとう階段下に追いやられことになったのだ。
図鑑を見ると冬に花を咲かせるとある。
どれどれと葉をかき分けると花とはいいがたい、柿のへたのようなもの、その真ん中に暗い穴がありひげみたいのが見えるのがおしべ?
花を横から見ると筒状になったところに紫がかった筋が見える。
近々、昇格とあいなるに違いない。