センダングサ(キク科)

新川の上を渡る橋が架けられようとしている。新川の横の山の向こうからトンネルが掘られ、川を越えて市役所までまっすぐな道が通るようになるのだ。朝夕の通勤時、イベント時の交通渋滞を大幅に解消するのではと期待されている。この川沿いの道を、私は毎日自転車で通勤する。
川の中州にはいろんな植物が生い茂り、鯉が泳ぎ、放し飼いにされている鴨が、羽を広げていたり、連なって泳いでいたりする。
バン、コサギ、大サギ、アオサギキセキレイイソシギカワセミなどの野鳥の姿もよく見ることが出来る。いわば奄美の自然が凝縮されたような川である。
今、その中州で、はたまたコンクリートの土手の割れ目にも根を伸ばし、隆盛を誇っているのがセンダングサである。野山にゆくとスカートやシャツに細長い茶色いものがひっついて、はらってもなかなか取れない。つまんで取っても取ってもなかなか取りきれなかったのが、センダングサの種だった。その実をつなげて字を書いたりもした。
子供の頃は、黄色い舌状花だけのコセンダングサが多かったのだが、今は真っ白い花びらを付けた外来種が多くなっている。心持ち、花びらを下にそらして咲いている。
この川の中流ほどの位置にあるのが通称、県病院。
義父は、病気のため、ここへ数度の入退院を繰り返したのだが、まだ比較的体力のあった頃、義母と一緒に病院の外まわりを車いすで散歩したり、セロファンに彩色し、モールとボタンで蝶を作ったりして退屈を紛らわしていた。
時々は散歩の途中で摘んだという花を瓶に挿して楽しんだりしていたが、ある時この花はなんというか知っている?と訊かれたので、センダングサと答えると、よく知っているねと褒められた。
若い頃はいろんな花の名前を覚えたんだがなあとぽつりと言った。